生地の話
テントを構成する主なパーツはポールと布。生地について掘り下げてみます。


生地の作り方 (原案 by グレさん)
生地は一本一本の糸を織って作られます。この糸は、はじめは「生成(きなり)」と呼ばれ、どちらかと言うと「真っ白」より少し黄ばんだ色の物です。色付きの糸も、この生成を染め上げて様々な色の糸が完成します。白い糸も生成を白く染め上げているのです。

糸の太さを示す単位は「デニール(Denier)」です。糸の太さは直径の測定が困難なので質量と長さとの比で表すようになっています。1 デニールは、長さ450メートルで質量が0.05グラムのものを指します。国際標準化機構(ISO)で制定されている単位は「テックス(Tex)」で、長さ1000メートル当たりの糸の質量をグラムで表した数になり、例えば 1テックスは長さ1000メートルで質量が 1グラムになります。

この生成を織り上げて織機からはずしたままの織物を「生機(きばた)」と言います。これが反物の元になるもので、生機を染色してようやく色付きの生地ができあがります。色付きの糸を編んでいるように思われていたかもしれませんが、生機を染めた方が色むらが出にくいのかもしれません。

染め方はいたって簡単で、大きなタンクに目的の色の染料を入れ、そこへ生機を漬け込むだけです。簡単に言えば「どぶ漬け」ですね。染め上がったところで生地を洗い流して検品へまわされ、撥水・防水処理の必要ないものは製品化されます。テントで使用される防水生地は、この後PU(ポリウレタン)コーティング加工が行なわれます。

生地の質やコーティングの質で耐水圧が決まってくるのですが、これがなかなか曲者で、同じ生地(同一ロット)であったとしても 1uの中でさえバラツキがあるようです。さらに、コーティング加工は 2,000mm 仕様で行なって最悪値が 1,800mm なので“1,800mm”表示をするメーカーもあれば(良心的)、最大値 1,800mm を取って“1,800mm”表示をするメーカーもあるそうです。これはユーザ側で確認のしようが無いことなので、牛肉の生産地表示のように信じるしかないのかもしれません。


素材による違い
テント生地には主にナイロンかポリエステルが使用されています。一部機種には、透湿性防水素材であるゴアテックスやミクロテックスのようなフッ素系樹脂膜をラミネートした生地が使われています。1980年代くらいまでは綿(コットン)素材で重くて嵩張る生地でしたが、現在は比べ物にならないくらい軽量化・コンパクト化が図られています。そう言えばコットン素材の三角テントをボーイスカウトで使ったなあ・・・。

代表的なナイロンとポリエステルはどちらも化学繊維です。以下に大辞林からの説明を転記します。


白いナイロン生地が紫外線で黄色に変色しやすいため、ポリエステルの方がナイロンより紫外線に強いと言われることがあります。実際には紫外線を受けても繊維自体の強度に違いは出ないようです。また、同じ強度を持たせた場合、ナイロンの方が軽くコンパクトになります。価格は若干ナイロンの方が高価です。


織り方による違い
生成を織って生機を作るのは前述のとおりです。生地の薄さは糸の細さ(デニール)で決まります。この糸を織って生地にするわけですが、代表的な織り方には、タフタ、ツイル、リップストップ、オックスフォードの 4種類があります。


フロア生地にはテンションがあまりかからず引き裂き強度はさほど求められません。そのためリップストップ織りで薄さを追及する必要が無く、タフタ織りが選択されているのではないでしょうか。また、リップストップ生地がなぜ格子状に見えるのかが調べてみて初めて理解できました。今まで何気なく見ていただけの生地が、なぜこの生地が採用されたのかまで想像できるようになるとさらに楽しいですね。例えばカタログからは以下のようなこともわかります。
生地の性能は、素材と織り方だけで決まるわけではありません。防水性能は、織り込む目の細かさとコーティングの厚さに依存します。例えば古いmossのカタログの記述には、70d ナイロン・タフタは 98 x 90本の密度で織られ(単位面積は不明)、コーティング前重量が 1平方ヤードあたり 2.2ozでコーティング後は 3.2ozになるとあります。つまり、0.8361u(91cm四方)あたり 30.98gのコーティング剤が使われているということです。


最近は生地の細かい仕様まで公開しているメーカーは少なくなりました。全体重量と耐水圧さえ判れば充分ですが、自分の持っているテントの細かいスペックを知るのも楽しいものです。皆さんのテントはどんな生地が使われてますか?