SilNylon - シルナイロン -
シリコンを浸透させた
ナイロン
生地であるSilNylonは、ウルトラライトを標榜するカテゴリの製品 −例えばテントやザックなど− に、頻繁に使われるようになってきています。自分自身もシルナイロン製スタッフバッグは使っており、さらに購入には至っていませんがシルナイロンを使った軽量テントも検討しています。年々低下する体力を考えれば軽量テントはとても魅力的。今まで友人のテントや小物系で使ったり触ったり調べたりしたことの備忘録です。
● SilNylon って?
たいてい 30 デニールか 40D のリップストップ・ナイロンにシリコンを浸透させた生地で、浸透後の重量が 1 平方ヤードで 1.3 オンス ( 44 g/u )程度です。もちろんさらに軽いタイプや重いタイプもあります。例えば
Big Agnes 社
の SeedHouse SL テントのフライシートでは、2005年モデルだと 30D、2006年モデルでは 20D が使われており、さらなる軽量化が図られています。
生地自身にシリコンを含んでいるので、通常のテントと同じ目止め剤 "シームシーラー" を使うことはできません。
耐水圧は 700 - 1,400mm 程度で、良質と言われるテントの多くがおよそ 2,000mm 以上であることを考えると、かなり弱いことがわかります。耐水圧で雨を防ぐのではなく、シリコンの持つ高い撥水性能で水を寄せ付けないという "防水設計ポリシー" に基づいていると言ったところでしょうか。
撥水は何もしないでも目を見張るべき性能を持っています。もし撥水性が落ちてきたと感じたなら、汚れによって生地表面のシリコンが覆われてしまったと考えるべきで、洗濯で撥水性を復活させます。もし撥水剤を使うなら当然シリコン系を使わなければなりません。もっとも、洗濯によって回復しないまでになった生地は、生地自身に滲みこんだシリコンが失われた結果なので、製品寿命だと思った方が良いでしょう。シリコン系撥水剤を塗るだけではなかなか初期状態みたいに生地全体に浸透させることは不可能でしょうから。
● 滑る
NIKWAXを超えるテントの撥水剤として
シリコン撥水剤
を使っています(使用感の報告はそのうち)。水滴が今まで見たこと無いようなスピードで生地上を滑り落ちていく気持ちいい撥水性能です。塗布の前後では手触りもハッキリ違います。つまりシリコンという素材は滑りが良くなるわけで、SilNylon をフロア生地に使っていると、わずかな傾斜でも滑って荷物一式が下流へ寄って行ってしまいます。小物くらいはどうってこと無いのですが、スリーピングパッドやシュラフが滑ってテントウォールにくっ付いてしまうのはいただけない。最新の
Therm-a-Rest
みたいにノンスリップ加工が施されたスリーピングパッドと組み合わせる必要がありそうです。
● 耐水圧が低い
シルナイロンは 1,200mm 程度の耐水圧しかありません。このスペックでは、テント内で座っていると水が滲みてきます(必要な耐水圧の解説は
ココ
を参照)。PU コーティングだけでそんなに劇的に耐水圧が上がるわけでもないので、本来フロア生地に使われるべき素材ではないのかもしれません。後述の強度不足を補う意味でも、できるだけ水分から生地を遠ざける意味でも、フットプリントの併用がお奨めです。
● シームテープが使えない
ほとんどのシルナイロン製テントは縫い糸にもシリコン含有糸を使っているようですが、縫い針で開けた穴を完全に塞ぐところまでは行きません。縫い目から細かい飛沫(しぶき)が風でテント内に飛散するのも実際に見ています。アイロンで貼り付けるシームテープは生地とテープの間に空気が入ると剥がれてしまうので、特別な加工をしていない普通のシルナイロンには、シームテープを貼ることができません。このような理由で目止め剤(シームシーラー)を使うしか方法が無いのですが、目止め剤なら何でも良いというわけでもないのです。生地自身にシリコンを含んでいるので、シリコン系の
Silnet
のような製品を使う必要があります。
元々極薄のシルナイロンは、厚さに対するミシン目の直径の割合が大きいので、一般的な生地で作られたテントなどにくらべて縫製箇所が弱い特徴を持っています。目止め処理には、まるで切り取り線のように破れやすく切れやすくなったミシン目を補強する意味合いもあるので、シーリング剤の塗布は必須です。
● 強度が弱い
シルナイロンの厚みは 0.038mm 程度しか無い
リップストップ・ナイロン
です。重量あたりの引き裂き強度は強いのですが、ピンホールから一気に裂ける性質を持っています。このような生地をテントのフロアに使用すると、鋭利な小石や岩と人間の体重に挟まれた生地に、目に見えないくらい極小の穴から目視できる程度の穴までが開きやすい。トラディショナルなテントでリップストップ生地をフロアに使わない理由もこれを避けるためです。また、シルナイロン製バックパック(ザック)だと、折れた枝に擦ったり転倒して岩に当たった時に、やはり破損しやすいです。装備の中に応急処置用ガムテープを入れておいた方がいいでしょうね。また、テントの場合はフットプリントを併用した方が安全です。
● 傾向
『軽量性』と『収納性』というとても大きなメリットを持つ SilNylon は、今までの用具と全く同じ感覚で接するとトラブルに見舞われる可能性が高そうです。シルナイロンに限った話ではないですが、素材の特性を理解した対策が必要です。
メーカー側もそれなりの対策を進めているようで、2006年以降のトレンドとして、SilNylon に PU コーティングを施した生地が使われ始めました。PU コーティングしてあれば、当然シームテープを適用可能です。また、コーティングによって少しは穴が開き難くなります。テントのフロアの室内側にコーティングされていれば、滑りやすさも改善されます。その反面汗などでヌルヌルしやすくなるけど、moss以外のブランドはほとんど内コーティングだから、大半の人は気にならないでしょうね。